くすかき7日目。最近の流行りは和独楽・薪割り・正月・焼き芋・筍掘り。

くすかき7日目。朝は冷んやりとして落葉は少なかったが、日中は暖かくなり、はらはらと樟の葉が舞う落葉風景があった。朝のくすかき、くすのこうたきで樟脳づくり、夕方のくすかきと週末はくすかきフルコース。1日を終えると身体には良い感じの疲労感があり、ぐっすり眠れる。

 

最近〈くすかき〉で流行っているものを紹介します。

 

それは、和独楽・薪割り・正月・焼き芋・筍掘り。

 

〈和独楽(わごま)〉

小学生男子の間で、大流行。くすかきのはじまる前の朝6時20分から10分程度。夕方のくすかきの終わった後17時から20分程度など、合間の時間を使って盛り上がる。去年よりも、やる人が増え、また、「手のせ」など技術の向上が見られる。5月5日の端午の節句には和独楽の大会が境内で開かれる。

 

〈薪割り(まきわり)〉

くすのこうたきにて、樟の葉を水蒸気蒸留し樟脳を抽出する時に釜を焚く。その時、大量の薪割りが必要となる。父から息子へ、父から娘へ、大人から子供へ、兄から弟へ、薪割りが伝授されていく。去年割れなかった人が割れるようになったり、成長を感じられるものの一つ。綺麗に割れると爽快感があり気分がいいので人気。

 

〈正月(しょうがつ)〉

太宰府で昔に流行った遊び。〈くすかき〉に参加している30〜40代が子供の頃、よく境内で正月をして遊んだ。参加者は1月から12月の順番で自分の担当する月を決める。絵馬堂や鬼すべ堂などの屋根にカラーボールを最初の人が月を指名して、例えば「8月!」などと言って投げる。落ちてくる玉を指名された月、この場合は8月担当がキャッチする。落とさなかったら、すぐにまた月を指名して投げる。落としたら皆逃げ、落とした人はつかんだ時点でストップ!と叫ぶ。皆その場でストップし、落とした人は玉をつかんだ地点から3歩だけ移動OKで、玉を誰かに当てる。当たったら当てられた人がバツ1。当たられなかったらその人がバツ1。バツが3つになったら、磔(はりつけ)という名の罰ゲームを受ける。磔は壁を背に立ち、ある程度離れた場所から参加した一人一人からボールを1回ずつ投げ当てられる。〈くすかき〉では今年から登場し大流行。水蒸気蒸留の待ち時間など、ある程度まとまった時間を利用し、大人から子供まで参加。子供たちにも大人気。失われつつあった遊びが次世代へつながった。

 

〈焼き芋〉

くすのこうたきにて、樟の葉を水蒸気蒸留し樟脳を抽出する時に釜を焚く。その時、釜に芋を一緒に入れて焼き、焼きたてを食べる。安定した人気。皆、焼きたい芋を持参する。最近は、りんごやマシュマロなども登場している。だがやはり芋が特別に人気がある。小学校低学年の焼き芋好きは3分おきくらいで「いも焼けたかな?」と確認にくる(笑)。

 

〈筍掘り〉

毎年、〈くすかき〉の期間中に、筍が出てくる。山に入り、運良く出会うと掘って、釜で焼いて食べる。食べることより、掘るほうがどうやら人気があるようである。

 

時を経ても、年を重ねても、面白いものは面白い。

 

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土曜日の朝六時半。

 

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今朝の落葉は少ない。黄緑に光って見えるのが若葉。深緑や茶色はこれからまだ落ちてくる。

 

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朝のくすかき終了後。和独楽の早朝試合が開催される。

 

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先に止まったら負け。手に乗せてからぶつけたり、紐で叩いて回転を続けさせたりする。

 

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毎年、上達していく。

 

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鬼すべ堂にて、水蒸気蒸留待ち時間に正月をする。玉を拾いにいく人。逃げる人。

 

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焼き芋の人気は絶大です。

 

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自分の顔より大きな筍を掘りあて、満足げです。

 

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「見て!見て!」と、筍の皮の帽子。なかなか似合っています。

 

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落葉の瞬間。

 

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日中は、かなり気温が上がって、半袖の人もいました。気温と風で落ち葉量に変化があります。

 

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夕方のくすかき終了後。和独楽の試合が再び開催されます。


くすかき6日目。朝は大量の落葉、夕方は落葉なし。天草からの友人。

くすかき6日目。昨日の春の嵐の影響で、朝6時半のくすかきでは、ものすごい量の落ち葉と向き合った。逆に、現段階で落ちかけていた葉が全て落ちてしまったせいか、一度落葉はストップしたようで、夕方4時半のくすかきでは、ほぼ全くといっていいほどに落葉はなかった。

 

熊本は天草の陶芸家である「市山くじらや」の市山富美子さんが、昨日の夕方から一泊二日で〈くすかき〉をしに来てくれた。15年以上の友人で、〈くすかき〉がはじまった7年前から、定期的に足を運んでくれている貴重な存在の一人である。

 

彼女は、朝のくすかきを狙って一泊二日のスケジュールを組んでいる。さすが、楽しみ方をよく分かっている。

 

大雨の前日から気持ち良く晴れた朝という、天気に恵まれたこと。朝の太宰府天満宮の樟の杜で気持ちの良い時間を過ごせたこと。たくさんの地域の方が参加して〈くすかき〉が定着してきたこと。などなどの話をしてくれ、朝のくすかきを終え朝食を一緒に食べ、8時には天草へと帰っていった。忙しい中、足を運んでくれたことに感謝すると共に、天草到着後にくれた「行って良かった!!」という内容のメールにうれしくなった。

 

2つの話が印象に残っている。

 

一つは朝の〈くすかき〉の時、樟の葉を集めた大きな掻き山を見て、「こんなに綺麗にしてある落ち葉はじめて見た。一枚一枚、ほんとこんなにきれいなんやね」という、樟落ち葉に対する素直な反応の言葉。

 

そして、もう一つは別れ際、『「今朝は落ち葉がたくさん落ちましたね〜」って挨拶は、天草とかでもするけど、〈くすかき〉に来ている人たちは、そこからさらに「こうやって葉っぱを集めよう」とか「今年は落ちるのが早い」みたいな話になるでしょ。一つその言葉の意味が深いというか、ずれているというか。それが面白かった。』という感想をくれた。

 

何気なく〈くすかき〉参加者同士がしていた会話。我々にとっては当たり前のような会話だが、確かに外から見たら、樟の変化への注目度が異常に高い会話である(笑)。

 

季節の変化に対して、樟を一つの基準として向き合う。〈くすかき〉を通して身体で樟を体感し、その感動を誰かと共有し楽しむ。

 

落ち葉がたくさんの朝も、少ない朝も、それはそれで楽しんでいる。

 

7年やっているが、飽きるどころか、さらに面白みを感じている。

 

〈くすかき〉の何が面白いのか、、、本当の本当は分からない。一人一人違うだろう。

 

間違いないのは、樟が面白いのと、それに集う人が面白いということである。

 

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昨日の春の嵐で、一面が樟葉の絨毯に!

 

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亀の赤ちゃんを落ち葉の中から発見!!!暖かくなって冬眠から覚め動き出したのだろう。

 

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こんもりと大きくなった掻き山。

 

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夕方はほとんど落ち葉がなかったので、普段手の届かないところの落ち葉を集めました。


くすかき5日目。春の嵐でお休み。

くすかき5日目。昨夜からの風雨が強くなり今日は1日中、春の嵐といった天候だった。

 

そのため、くすかきはお休み。

 

でも、もしかしたら誰か来るかもしれないと思って、早朝6時半に境内の天神広場へ。

 

生暖かく嫌な風が、大粒の雨を吹き付けてくる。

 

天神広場の絵馬堂に退避したが、この時点で既に全身びしょ濡れ。

 

6時35分まで、待ったが、人の気配が全くなかったので、滞在先へともどった。

 

誰かが来るかもしれない。そう思って行ってみて、同じようにそこに来た誰かと会えるとうれしいからついあんな天候でも行ってしまった。

 

でもさすがにあの天候では誰も来ないか、、、(笑)

 

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朝6時半。誰もいない天神広場の絵馬堂。

 

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しばし絵馬堂で、誰かを待つ。雨が樟の落ち葉を大量に落とし、川のようになって流していく。


くすかき4日目。境内で波の音を聞く。

くすかき4日目。6時半から朝のくすかき。

 

今朝は冷えたせいか、落葉は少なかった。そんな日は、天神広場を広く全員で〈くすかき〉してみる。

 

くすかきをはじめてから、7年目の朝。ひとつ気が付いたことがある。

 

波の音がするのだ。

 

太宰府には海はない。

 

だがしかし、波の音がするのだ。

 

しかも、波打ち際の音、、、聞き覚えのある浜辺の音。

 

正体は樟の葉。

 

松葉ほうきを使って境内の砂を動かさずに、樟の葉だけ動かすと、葉と葉が擦れる音がする。それが、浜辺で聞く、波の音とそっくりなのだ。

 

浜辺で聞く波の音は心地良い。

 

くすかきをする心地よさは、もしかしたらここにあったのかもしれない。

 

松葉ほうきによって描かれた縞模様は水面に見え、寄せられた樟の葉は、寄せては返す波の泡に見えてくる。

 

今朝の自分は、くすかきをすることで、境内という波打ち際に立っていた。

 

太宰府に海を見つけた朝。

 

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淡い黄緑に光って見えるのが樟若葉。だいぶ大きく成長している。今年は早い。

 

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朝6時半。天神広場を大きく使って〈くすかき〉してみる。

 

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境内から波の音が聞こえてくる。

 

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縞模様の水面と樟の葉の泡でつくられる波打ち際。

 

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心地良い音色が聞こえる。

 

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樟の葉は回収され、境内という海が広がる朝。

 

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掻き山は3日目でこの大きさまで成長。

 

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朝の光を浴びてキラキラと輝く樟の葉と境内。


くすかき3日目。太宰府小学校プレゼンに向けて打ち合せ。

くすかき3日目。6時半から朝のくすかき。日中は滞在先の山かげ亭で事務作業し、15時から打合せ。16時半から夕方のくすかき。といった1日だった。

 

15時〜の主な打合せの相手は、太宰府小学校のこの春6年生になる3人。3人とも、くすかきにここ数年、毎年参加している。

 

なぜ彼らと打合せをするかというと、こんど太宰府小学校で、全校生徒に向けて、30分という時間をいただき、くすかきを紹介することになったからである。

 

ことの発端は、彼ら3人が、くすかきに参加する人をもっと増やすにはどうしたらいいか?ということを自分たちで考え、なんと、校長室へ行き、校長先生にみんなに向かって、くすかきを紹介する機会をもらえないか?という交渉を行ったのだそうだ。

 

すると、太宰府小学校の校長先生は、「みんなが太宰府のことが好きになるのならよいよ」と、許可をくれたのだそうだ。

 

しかも、彼らのすごいところは、そこで校長先生の都合を聞き、日程まで調整し4月13日、14日、15日のどれかに絞り込み、さらには30分というプレゼン時間を確保してきた。

 

その上、その30分は、最初の10分は自分たち3人からそれぞれに、くすかきについて自分の言葉で紹介。間の10分は、DVDで去年の様子を再生。最後の10分は、会期中で太宰府入りしている五十嵐をゲストに招いて直接生徒たちに声がけをするという提案まであった。そこらへんのマネージャーよりも仕事ができる!

 

しかしながら、何より嬉しかったのは、彼らが自分たちで考え行動したということである。

 

くすかきが自分ごとになっているということである。個人的には、彼らが彼ら自身の言葉で、どのようにくすかきについて話をして、学校のみんなに紹介するのか?その部分に非常に興味がある。

 

7回目を迎えたくすかきは、太宰府という地域に対して、こんな新しい展開を迎えている。土地に根ざしてきた揺るぎない証拠の一つである。

 

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朝、境内に着くと、今日もたくさんの落ち葉。

 

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友人を連れて来てくれました。2人は今年新一年生になります。

 

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友人と共に樟の葉っぱを砂やゴミから分別。

 

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葉っぱを集めはじめてから、今日でまだ2日目にもかかわらず、掻き山はもうこんなに大きく成長しました。


くすかき2日目。かきはじめ。くすのこうたき1回目。

くすかき2日目。今日は、くすかきとして樟の落ち葉を掻く最初の日〈かきはじめ〉である。早朝6時半、太宰府天満宮の境内へと向かう。

 

みんないるだろうか?

 

ドキドキしながら、境内へと入り、天神広場に目をやる。人影をみつけ、嬉しくなる。みんなと樟の杜の朝のこの時間に1年ぶりの再会。

 

「おはようございます!」

「おはよ〜」

「遅いよ〜(笑)」

「眠そうやん。顔腫れとるよ(笑)」

「元気やった〜?」

「1年ぶりやね〜」

「ご無沙汰してます!」

「今年もよろしく!」

「おお!大きくなったな〜」

「この春に小学校入学やけん」

「一番乗り、誰やった〜?」

「一番乗りは信二さん。オレが2番で、ゆうやが3番やった〜」

「次は絶対一番とるけん(笑)」

「葉っぱ、もうだいぶ落ちよるよ。はよ、くすかきせな(笑)」

 

こんなに嬉しい気持ちになるなんて!!!

 

子供の頃、夏休みに、だれか友達いるかな〜?って気持ちで公園に行ったら、けっこうたくさん友達がいた感じに似ている。しかもそれが1年ぶり。しかも朝の6時半!!!なんと合計28人が集った!!!なんとも言葉にできないうれしい感情が湧き出てくる。

 

春の約束の日、早朝6時半の約束の時間、太宰府天満宮の樟の杜で仲間と再会した。

 

早朝の光と聖域の空気。見上げると若葉。足元には落ち葉。まさに、くすかきの世界である。1年ぶりの松葉ほうき。まだ動きはぎこちない。これから、3週間かけて、徐々に掻き手としての間隔を取り戻し、最終日の〈くすのかきあげ〉に向かって、足並みと呼吸を合わせていく。

 

その後、日中は〈くすのこうたき〉。鬼すべ堂で樟の葉を水蒸気蒸留し樟脳づくり。そして16時半から夕方のくすかきをして、1日を終えた。

 

春。芽吹いた樟若葉と、子供たちの成長に1年という時の刻みを、しっかりと感じさせてもらえる。くすかきには子供たちが似合う。やはり樟若葉とイメージが重なるからだろう。

 

仕事の都合上、各地を転々とするが、春に太宰府に来ると、1114年目を迎えた太宰府天満宮と、長いものでは1500年以上の時を刻む樟があり、樟若葉の芽吹きと子供たちの成長を確認することができる。

 

そうすることで、大人になった自分は、今現在、自分がどこにいるのか確認することができる。

 

1年に一度、もどってくる場所がある。

 

今、自分はどこまで来ているのか?次にどこに向かうのか?基準があるから分かるのである。

 

自分にとって、ここ太宰府は、航海で言うところの現在地を確認するための天の星のような土地である。星のように永くそこにあり続ける土地である。

 

航海をしていて、行き先を確認する時は、まず、天の星を見上げて自分の場所を確認する。そして、どこから来たのかを確認し、次にどこに向かおうとしているのかを確認する。

 

1年に1度、生きる航海針路を定めるために太宰府に来ている。

 

あとは、1年に一番早起きで健康的な1ヶ月を過ごし、体と心の調子を整えるためにも来ている(笑)。

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朝6時半。樟の杜。みんなが来ていた。

 

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平成28年くすかき。かきはじめは28名。これからどんな仲間が増えるのか楽しみです。

 

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体も中身も成長しています。

 

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自分で考えて自分で行動できるようになっていました。

 

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1年ぶりの薪割り。

 

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父から学ぶ。

 

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今年の釜は泥だんごで固めます。梅が枝餅屋の跡取りはさすがです。「泥だんごどれくらいの大きさで作るといいと?」「じゃあ梅が枝餅くらいで(笑)」。すると、完璧な梅が枝餅の量で、泥だんごを作ってくれました(笑)。

 

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泥が固まるまで荒縄で固定したら、なんだかありがたい釜に見えてきました。思わず手を合わせたくなるのは日本人だけでしょう(笑)。

 

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水蒸気蒸留装置。右の釜の上に樟の葉が入っており、水蒸気蒸留し左のタンクで冷却し樟脳を回収します。

 

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待ち時間。薪割りしたり、バレーボールしたり。ゆったりと過ごす。

 

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火の番の弟子たちと、泥だんご職人の弟子たち。

 

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泥だんご職人から陶芸家へ(笑)

 

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1日で掻き山がこんなに大きくなりました。


くすかき初日。松葉ほうきづくり。

くすかき初日。今日は「平成二十八年 第七回 くすかき-太宰府天満宮-」の初日。くすかき初日の恒例行事は〈松葉ほうきつくり〉。“今年の樟の落ち葉と向き合うため”の、“今年の松葉ほうきをつくる”ところから、くすかきがはじまる。

 

太宰府天満宮の松葉ほうきを年間200〜300本制作されている職人の原口葵氏をお招きして、原口さんの指導の元、それぞれに自分で自分の松葉ほうきをつくる。原口さんと会うのもちょうど1年ぶり。松葉ほうきを作って63年。その手さばきは、もはや職人の域を超え、達人に見える。部材になった竹を見ただけで、根元に近いかなど、どの部位か分かるという。

 

今年、くすかきは7回目を迎える。これまで基本的には毎年松葉ほうきをつくってきた。少しは上達したいものだが、一年に一度だけとなると、なかなか思い通りに上手くはならない。

 

つくる前は、いろいろなイメージで盛り上がる。

 

「この部分が地面に着くから、もうちょっと全体の扇の形はもっと反っていた方がよいはずだよね」

「柄の部分をこうもって動かすから、その角度からすると、こんな形になるとよいよね」

 

なんて具合に、理想の松葉ほうきについて一頻り語ってから、自分の理想に近づけようと懸命につくるのだが、、、。まぁ、これが難しい。きれいに扇型につくるのだけでも精一杯で、反りがどうのとか、角度がどうのとか、それ以前の問題である(笑)。

 

それでも、みんなでワイワイとくすかきについて、樟の木について話をしながら、松葉ほうきをつくるのは楽しいし、何より、出来上がった時の充実感がよい。

 

多少形が不恰好でも、この自分のつくった松葉ほうきで、今年は頑張るぞ!という気分になり、気持ちをあらたにするのだ。

 

参加した小学3年生のえいじくんは自分の松葉ほうきの柄に、こう記していた。

 

「米 みなと えいじ めざせ40回 くすかきに いく 2016年 くすかき。」

 

くすかきは朝と夕方、週末は樟脳づくりといった感じで、三週間全ての回に出席すると、今年は40回分のハンコが押される計算となる。そこで一番を目指す。小学生の間ではこれが1つの目標にもなっている。

 

五十嵐「ちなみに去年は何回やったっけ?」

えいじくん「10回やった(笑)。でも、ここに書いたけん。やるしかないやろ。…でも、早起き苦手なんよ。おれ、どんなに早く寝ても、早起きできんけん、、。」

 

明日、早朝6時半から、いよいよ、7年目のくすかき、はじまります。

 

どんな物語が待っているのか、今から楽しみです。

 

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朝8時半。朝拝。本殿前の飛梅の若葉が芽吹く頃に、毎年くすかきがはじまります。

 

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太宰府天満宮所有の滞在先である山かげ亭で松葉ほうき職人の原口さんと待ち合わせ。時間ができたのか竹部材のメンテナンスをされていました。息を飲むほどに美しい光景にしばし佇んでいました。

 

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63年つくってきた人と、初めてつくる人。

 

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なかなか職人さんのように上手くはできないけど、みんな懸命に取り組む姿が、とてもよい雰囲気でした。

 

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記念写真を一枚。実はこのバックになっている丸太が、かつて存在した千年樟なのです。

 

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新しい松葉ほうきは若く、青い。


瀬戸内国際芸術祭2016開幕!そらあみ〈島巡り〉は地球の息吹を捉える。

沙弥島滞在36日目。瀬戸内国際芸術祭2016が開幕した。

 

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【そらあみ〈島巡り〉】

《春会期(3月20日〜4月17日):沙弥島》

瀬戸大橋でつながる沙弥島、瀬居島、与島、岩黒島、櫃石島の5つの島で漁網を編むワークショップを開催し、島に暮らす漁師や、集った人々192名で協働した。そして空に向かって垂直に、波打ち際に設置。風や雲や日光といった天候の移り変わりと潮の満ち引きによって見えかたが刻一刻と変化していく様子を鑑賞者は網越しに眺める。

漁網を編むことで、人と人をつなぎ、海や島の記憶をつなぎ、完成した網の目を通して土地の風景をとらえ直すという目論み。今回、新たに加わった潮の干満という要素によって、海から陸へと移行した我々の中に眠る海の記憶がより刺激されることを期待する。

秋会期には本島に渡り、新たに本島でつくられた漁網を連結。行政区分を超え、島から島へ海のつながりを編み広げていく。

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今回の作品は海上に設置するため、作品の見え方として、潮の満ち引きが重要なポイントとなる。今日の満潮は9時54分と21時55分。干潮は3時22分と16時9分。

 

潮は1日に2回満ち引きがある。約6時間かけて潮は満ち、約6時間かけて潮が引く、これが1日に2回。それで24時間というわけだ。潮の満ち引きは月の満ち欠けと連動している。古代から人間は、月の満ち欠けの周期から暦をつくり生活に役立てるとともに、鑑賞の対象にしてきた。

 

潮の満ち引きは月の引力によって起こる。月の引力は、月に面した地球表面で最大となり、海水は月の引力に引きつけられ、盛り上がる。こうして海水が集まった場所が満潮となる。新月や満月になると、太陽と月と地球は一直線上に並ぶため、月と太陽の引力が合わさり潮の満ち引きが大きくなる。これが「大潮」。逆に半月の時は「小潮」となる。

 

以前に珊瑚の産卵を見に行った時、産卵は新月の夜だった。同行していた珊瑚の研究者の話では産卵は満月か新月の時で、大潮に乗せて卵をより遠くまで運ぶことが目的だと考えられているそうだ。人間も満月の時に出産しやすいという話も聞いたことがある。

 

この星の生物のはじまりが海からだとするならば、我々のDNAの奥深くには、潮のリズムが刻まれているに違いない。この星に生きる者として、自らのリズムを確認しに、そらあみをきっかけに海や空と向き合いに来てもらえたらうれしい。

 

実際に沙弥島の波打ち際で〈そらあみ〉に向かって立つと、網を吹き抜ける海風と潮の満ち引きを感じる。

 

今回のそらあみは瀬戸内海の風景と共に、地球の息吹を捉える。

 

それは、島民や漁師さんが日々向き合っている世界。

 

日本という島国で命をつなぐ豊かさが島には残っている。

 

都市に集中し我々が見失っている美しい日本人の暮らしであり、DNAに眠る記憶を、いい感じに不揃いな網の目の向こう側から感じてもらえたらと思う。

 

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潮が満ちてくる。海風が吹き抜けていく。

 

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記念写真の撮影場所になっています。

 

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干潮時は、そらあみの下を歩けます。

 

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海を背にして見るとこんな感じ。

 

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満潮時。波打ち際に佇んで、海と空に向き合ってみる。

 

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3年前の瀬戸芸よりも見にくる人が多い感じがします。

 

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水面の光の模様も網の形に見えます。

 

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波の音が聞こえる。

 

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海風が作る網の形。海潮に映る網の影。

 

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干潮時。

 

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下から見上げてみる。

 

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網を少しだけ触って、風の力を感じてみる。


そらあみ〈島巡り〉完成!!!与島五島、編み合わせ。

沙弥島滞在34日目。今日は、沙弥島の西の浜にて、「そらあみ〈島巡り〉」の完成式を行った。

 

具体的には与島五島が各島で約一ヶ月かけて編んだ5枚の〈そらあみ〉を、1枚につなぎ合わせる“編み合わせ”を行った。

 

与島五島から集った総勢50人ほどの漁師さんをはじめとする島民の方々は、そらあみをきっかけに3年ぶりの再会となった。他には〈そらあみツアー〉に参加した一般の人の姿もあり、一緒に〈そらあみ〉を編んだ仲間が再会する機会となった。

 

西の浜への集合時間は13時。もちろん今日の干潮14時33分のタイミングに合わせた。

 

漁師は集合が早い。集合時間の13時前には、各島から来てくださった漁師さんたちが寄って、立ち話がはじまる。「おうっ!じいさん、まだ生きとったか?(笑)」「まだ、死んどらんわ(笑)」といった感じの粋な挨拶からはじまる。

 

だいたいみなさんがそろったところで簡単な挨拶をして、早速編み合わせ。実際の与島五島の配置と同じように、南から北へ、沙弥島、瀬居島、与島、岩黒島、櫃石島といった順番で編み合わせた。

 

与島の人「おう。おまえのところの編み合わせのやり方の方が、五十嵐に習ったのより、しやすそうやの」

瀬居島の人「そりゃそうや。こっちは本職やからの」

 

なんて具合にワイワイと会話が弾む。別の島の人同士が一緒に編んでいる姿をみると、与島五島オールスターズといった感じで、なんとも嬉しくなる。

 

良い雰囲気で作業は進み、細かなほつれなども綺麗にして、30分ほどで高さ5m×幅60mの一枚の網が仕上がった。

 

「せーの」で声を合わせて、滑車に通したロープを引いていき、徐々に〈そらあみ〉は、瀬戸内の空へ上がっていった。

 

自然と拍手があがり、皆、しばし眺めていた、、、。

 

やはり漁師は海と網がとてもよく似合う。濃紺の漁協の帽子をかぶり、白い長靴を履いて、そらあみと瀬戸内海を背にして話をする姿は、なんだか神々しくもあった。

 

そして、みなさん同じことを言う。

 

漁師「やっぱり、うちの島の網が一番きれいやのう〜。なぁ?」

五十嵐「はい。そうですね〜。どの島も同じこと言ってますよ(笑)」

漁師「ほんまに?(笑)。やっぱ、そんなもんかの(笑)」

 

面白くも不思議なもので、島によって雰囲気や人の性格が違うように、網にも特徴が出る。

 

短いくらいなら、少し長めの方がええやろ、ということで、少し裾が長く保険がかけてある沙弥島。

人が多くいろんな目の大きさがあれど、組織立ってまとまって見える瀬居島。

丁寧にきちっと真面目に編まれた与島。

寸法通りにきちっと仕上がっている岩黒島。

個性的な網の目が、どうにか見事にまとまっている櫃石島。

 

それぞれ本当に違う。違うからいいのである。違いによってそれぞれの良さが、際立つのである。

 

それぞれ本当にその島らしさが網目に現れていて、眺めていると、島のみなさんの顔が浮かんできて思わずニヤけてしまう。これぞ、手仕事でしか感じられない魅力である。

 

与島五島の方々が魅力的だから、そらあみ〈島巡り〉という作品は魅力的ということである。

 

3年ぶりに再びこうして網を編んで、浜でみなさんと再会することができました。

 

とてもうれしい瞬間でした。

 

かつて、そらあみが生まれるきっかけとなった伊豆七島の三宅島で出会った、日々、漁網を編み、90歳を超えた大長老漁師が言った言葉が頭に浮かんでいた。

 

「網は人を寄せる」

 

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細かいほつれも最終調整。

 

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きれいに網目が広がるように、ロープに対して網を均等に広げます。

 

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ここは、こうしてやらんと合わんやろ。

 

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あんたが、編んどったほうが早いわ。あとは頼んだわ(笑)

 

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うちの網と、あんたの網と、よう合わんわ(笑)

 

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徐々に一枚の網に仕上がっていきます。

 

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おーい!準備はええかー?

 

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滑車に通したロープを引いて

 

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そのロープを固定。

 

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おい!あそこ!おかしくないか(笑)

 

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みんなで記念写真を一枚!!!

 

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与島五島の示す立て看板。直線部分は瀬戸大橋。左が岡山。右が香川。

 

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そらあみ〈島巡り〉参加者の名前です。総勢192名。内訳[漁師(島民):111名。一般:81名)


潮の満ち引きのある浜辺にポールを立てる難しさ

沙弥島滞在33日目。今日は、そらあみの仮設置を行った。

 

今回のそらあみは波打ち際での設置となる。そのため、潮の満ち引きを計算して作業時間を決め、ポールを設置しなければならなかった。

 

施工業者さんは、干潮のタイミングの1〜2時間前に現場入りし、潮の引き具合を見て、徐々に作業にとりかかる。

 

1時間ほどで、水平距離にして4mほど潮は引き、逆に満ち潮に変わると、1時間で4m波打ち際が迫ってくるといった条件下でのポール設営は決して簡単なものではなかった。

 

しかも、作品の意向としては、可能な限り沖に設置したいと伝えさせてもらっていた。とはいえ、干潮時に施工業者さんが海に浸かるまでの作業できる時間の限界があるので、自ずと限界のラインができる。

 

結果、ギリギリのところでポールが立った。無理を聞いてくれた男気のある施工業者さんには心より感謝である。

 

強度計算をしてくださった一級建築士の方々もおっしゃっていたが、強度計算としては、計算上はまったく問題ないのだが、今回の相手は浜辺。どれくらいこの浜辺の砂が波によって動くのかは、正確には分かりきれない部分がある。

 

こういった形で浜辺にポールを立てるというのは、過去の事例がない。ゆえに、建築家にとっても施工業者にとっても、新しい挑戦だったのだ。

 

当然、ご察しの通り、漁師さんたちは、いろんな意見を言う。

 

「こんな方法でやっとったら、倒れるで」

「浜の砂は動くからの」

「杭だって、浮いてくるかも分からんぞ」

「もっとこう大きなコンクリートの塊を打ち込まんといかん」

「波がかかったらみんな錆びてしまうやろ」

 

こうして、みんなが作品の心配をしてくれる。どうやったら上手く設置できるかそれぞれに考えて意見してくれる。

 

結果としては、もちろん建築家の強度計算と図面の元、施工業者がポールを立てるのだが、漁師さんたちも一緒に新しい挑戦をしているというのが伝わってきた。

 

海は生きている。毎日、潮が満ち引きし、こんなにも変化してしているとは、こうして向き合ってみないことには気がつかなかったことである。

 

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潮が満ちてくる。限られた時間の中での作業が強いられる。

 

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浜辺を掘れば、当然、水が出る。

 

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潮が満ちてきた。これ以上は作業できない。

 

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ここに、そらあみがかかったら、、、と思うと興奮する。

 

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滑車を仕込む。

 

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仮設置。