くすかき九日目「昨夜、樟の若葉が開いた」

くすかき九日目。気持ちの良い晴れ。夕方からは冷たい風が吹き冷え込んだ。6:30〜朝のくすかきは大人21名、子供10名の合計31名。10:00〜15:00のくすのこうたきには大人10名、子供7名の合計17名の参加。16:00〜夕方のくすかきには大人13名、子供13名の合計26名が参加。

 

昨日の夕方のくすかきで一枚の葉っぱも残らず掻いたが、今朝、天神広場に到着すると一面に樟の葉の落葉がまるで絨毯のように広がっていた。そこには樟若葉の新芽を包む薄皮も一緒にたくさん落ちており、昨夜から今朝にかけて一斉に若葉が開いたことを示していた。

 

今年のくすかき会期は樟の落葉時期とタイミングがドンピシャに合っている。4月1日の初日は、まだほとんど落葉がなかったが、この一週間で完全に落葉がはじまり、その最初の落葉ピークの瞬間であり、若葉が開いた瞬間が昨夜だったというわけだ。

 

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6:30太宰府天満宮にて。樟の葉の絨毯。

 

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白く花びらのように見えるのが、樟若葉の新芽を包む薄皮です。

 

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6:30〜朝のくすかきの風景。大人21名、子供10名。やはり、くすかきは朝が人気ですし、おすすめです。

 

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昨夜から今朝にかけて開いた樟若葉。まだ白く光りが透けて輝いて見えます。

 

 

 

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7:00すぎ。朝日が山のむこうから登って樟の木洩れ陽が境内に映ります。

 

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山かげ亭の桜も満開になりました。

 

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毎春迎えてくれる山かげ亭の桜。もうすぐうぐいすがやってきます。最初は鳴き声が下手で、徐々に上手になっていきます。それも楽しみの一つです。

 

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今朝、回収した樟脳。昨日のくすのこうたきで水蒸気蒸留したものです。

 

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竹パンを焼いています。

 

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鬼すべ堂のくすのこうたき、水蒸気蒸留装置前にて。

 

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夕方のくすかき終了後、独楽(こま)まわしがはじまりました。ケンカ独楽です。

 

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今日収穫した樟脳を保管用の瓶に移しかえます。元気な笑顔と同じくらい真剣な表情も良いものです。


くすかき八日目「くすかきに集まる子供たち」

くすかき八日目。6:30〜朝のくすかきは雨のため中止。10:00〜15:00のくすのこうたきには大人15名、子供20名の合計35名の参加。16:00〜夕方のくすかきには大人13名、子供2名の合計15名が参加。

 

今朝6時頃までは小雨だったが、6:30の朝のくすかきを前にして雨足が一気に強くなり中止と判断。家を出る時には雨が止んでいて、くすかきできるかな?と集ったみんなと、屋根のある絵馬堂で雨の天神広場をしばし眺め、「今年はなんだか雨が多いね」といった会話を交わし、解散。

 

10:00〜15:00のくすのこうたき(樟の葉を水蒸気蒸留し樟脳という香りの結晶を抽出する)には、この天気だと人があまり集まらないかなと危惧していたが、ふたを開けたら、大人15名、子供20名の合計35名の参加で賑わった。

 

くすかきに集まる子供たちは、たくましく、素直で、素朴な子が多い。みんな気持ちの良い子供たちだ。薪割りをしたり、窯に薪を焼べている風景はまるで戦後や昭和の頃のような光景である。

 

今日、参加してくれた春から4年生になる男の子は登場した際、リュックサックに大きなスコップが刺さっており、脇にはノコギリがぶら下がっていた。なんとそのスコップは誕生日プレゼントに自らリクエストしたスコップだという。誕生日プレゼントにスコップが欲しいを答えるようなカッコイイ少年である。彼は薪割りも無駄な力が入っておらず、自分の今の体のサイズでは割れないような大きな丸太も、外側から剥ぎ取るように割って、最終的には見事に割り切る。話を聞くと、剣道で西日本大会3位になったという。数年前からくすかきに参加してくれているが、驚きの成長を遂げていた。

 

他にも、泥で汚れてしまった自分の十得ナイフを丁寧に洗っている子がいたり、窯に火を点けるのに必要な薪を自主的に山に取りに行く子がいたり、そろそろ時期だよねといった感じでタケノコを掘りに行く子がいたり、ほんとうにみんな一緒にいて気持ちが良い。この星で正しく生きているように見える。これは親の子育ての方針も大きい。また、くすかきに参加している家族は子沢山が多い。なんとなく3人兄弟くらいが平均で、多いところは4人兄弟も5人兄弟といった家族もいる。

 

ちらっと聞いた話では、中には小学校に入った時に少し苦労する子もいたりするそうだ。自然の中で、たくさんの兄弟や、大きな家族仲間と、のびのびと育った子が、学校という一つの価値のあり方で、枠組みに上手に入ることを良しとする現代社会の小さな象徴のような環境に、彼らが遭遇するというのはなかなか、本人の中では状況の違いに苦労するだろうし、自分の中で調整やバランスを保たなければならないのだろうなと想像する。

 

枠組みに当てはまる人を育てる社会ではなく、その人の特徴(できることできないこと)が他者との関係性によってフォローしあえたり、互いの才能が活かされるような社会であるべきだと考える。

 

効率的な社会運営のために人が存在しているわけではなく、人がつながって社会ができあがるのが本来のありかただ。彼らの未来をどうつくっていけるか、それは今の大人の仕事であり、彼らとともにつくるものでもある。

 

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6:30絵馬堂にて

 

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2歳にして樟の葉を見分け分別している。驚き!

 

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水蒸気蒸留装置冷却のため水が流れている。そこに集って葉っぱを船にして流したり。こどもは水が好きだ。

 

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窯の火番の監督と、小さな監督と、、、偶然にもダメだしされるアシスタントのように跪く大人の図(笑)

 

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薪を割る風景。

 

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樟脳は白くちゃんと抽出されているようです。

 

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16:00〜夕方のくすかき。すごい量の落葉。

 

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美しく場と向き合う。


くすかき七日目「雨が作った樟の葉の輪郭跡」

くすかき七日目。朝のくすかきには大人13人、子供9人の合計22人が集った。早朝6時前、雨音で目覚める。今日は中止かな…?昨日から雨予報だったが6時過ぎには一時的に雨がやんだ。なんとも微妙な天気。こういう日は…みんなきっときているはず…。

 

6:30の天神広場には、やはりみんな来ていた。

 

「今日どうする?」

「微妙よね」

「朝まで雨やったもんね」

「葉っぱ泥だらけになるよ」

「うーん…どうしようかね」

 

なんとも判断が難しい。春から中学一年になる八海くんにちょっと掻いてもらって印象を聞く。「できなくないですよ」

 

ということで、今朝は葉に砂が付かないように、フェザータッチでくすかきを行った。松葉ほうきを地面すれすれで動かす集中力が必要だが、技術向上にはちょうど良かったかもしれない。みんな集中して、そっと樟の葉を集めた。

 

丁寧にくすかきした地面には、雨が作った樟の葉の輪郭跡が残っていた。

 

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砂が動かないように、そぅ〜っと、そぅ〜っと

 

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ここの辺りは砂が付きやすいね…。と場所によって違う砂の質感にも気がつくようになる。

 

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砂が付かない木製の橋の上。芳樟袋に入れる樟の葉を選びます。

 

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赤と緑のコントラスト。

 

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乾かします。

 

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白く見えるのが樟若葉の新芽。これから白い薄皮が落ちはじめます。


くすかき六日目「いってらっしゃい」

くすかき六日目。朝のくすかきには大人13人、子供8人の合計21人が集った。6:30からの朝のくすかきの時間はなんとか大丈夫だったが、その後土砂降りの雨となった1日だった。朝の境内の地面は見渡す限りの樟の落葉。本格的に樟の落葉がはじまった感がある。

 

たくさんの落葉でも、みんなの雰囲気は「おお。やっと落ちてきたね」といった様子で、朝のくすかきの6:30〜7:00くらいの約30分ほどで、気持ち良い流れでくすかきができた。掻き山が今朝のくすかきで一気に大きくなった。

 

今日が太宰府小学校は始業式。もちろん大人は会社へ通勤がある。朝のくすかきを一足先に終えて家路につく人は「それじゃ、お先です!」と一言。みんなは「いってらっしゃい!」と送り出す。自然と朝に生まれたやりとり。

 

これから約3週間。樟の杜からの通学、通勤となる。

 

そして、誰かを「いってらっしゃい」と送り出すのは、なんとも気分がいい。

 

もどってくることを知っているからだろうか。人が集い、その場所と関わることで、朝の樟の杜が自分たちの居場所になる。

 

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赤くなって落ちるもの。黄色っぽいのもあるし、橙色もある。

 

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一面の落葉。本格的に落葉スタート。

 

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1日で掻き山が一気に大きく成長。芳樟袋に入れる小ぶりな葉を選んでいます。

 

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去年の松葉ほうきと今年の松葉ほうき。

 

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8:30からの朝拝にて。御本殿横の飛梅も若葉が出始めました。

 

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日中は芳樟袋制作を山かげ亭でおこなっています。

 

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極上の落葉を選んで袋に詰めます。

 

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数を数えて、、、。

 

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タグをつけたら出来上がり。


くすかき五日目「若葉が芽吹く時」

くすかき五日目。朝のくすかきには大人16人、子供11人の合計27人が集った。境内には集った人出に十分な落葉があった。昨日は日中気温も上がったので、落葉も本格的にスタートした印象。

 

子供たちも増えてきた。きっと「くすかきはじまったよ〜」という話が兄弟や友人から伝わっていっているのだろう。1年ぶりの子供たちの印象はやはり成長しており、去年は遊んでばかりいた人たちも黙々と樟の葉に向き合っていたりする光景に、しばしば驚かされる。

 

樟の木は、「ゆずり葉」と呼ばれる。若葉が芽吹くと、それに押されるように古い葉が落ちてくる。落葉があるということは若葉の芽吹きを意味している。ちょうど今から3週間ほどが、若葉が芽吹く時なのである。

 

くすかきを一緒にやっている大人たちは、こんな話をする。

 

「今年はだれの年になるかね?」

 

くすかきをしていると、会期中に急成長を遂げる人がいる。3週間毎朝一緒にくすかきをしているから、その成長の変化に気がつくことができる。成長のしかたはそれぞれだが、なんというか意志がしっかりとするような成長のイメージ。それは子供に多い。

 

誰かの成長に立ち会うことほど感動的なものはない。それを楽しみにしている人も多い。会期のはじめに兆しを感じる人もいたりするのでちょっと期待してしまったりするのだが、もちろんその通りになるわけでもない。

 

それはまるで、樟の若葉が芽吹く時のように、一気に開くのだ。

 

最終日のくすのかきあげでは、そんな芽吹きを迎えた人が、船当番となり、大樟香舟に乗せた今年の香りを天へと届ける役を担う。

 

もちろん、子供限定ではなく、大人にだって、芽吹きのチャンスはある。

 

今年はだれの年になるのか、楽しみである。

 

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朝、自分のほうきを探す。

 

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広い境内に樟の葉の波。

 

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人が増え、くすかきらしくなってきた。

 

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一人一人の印象が去年と明らかに違う。

 

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樟の木もその成長を見守っているかのようである。

 

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芳樟袋に入れる葉っぱを選定中。

 

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少し赤くなって落葉します。赤さや色味や模様は木によって違います。

 

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日中の山かげ亭の風景。芳樟袋を入れる包み紙を準備中。

 

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明日から、案内所や宝物殿にて芳樟袋の販売がスタートします。太宰府の春の香りを全国に届けます。売り上げはくすかきの運営資金になります。


くすかき四日目「あいだの季節」

くすかき四日目。昨日はくすかきはお休みだったが、朝に日曜日にくすのこうたき(水蒸気蒸留)をした樟脳回収を行った。はてさて、今年は採れているだろうか、、、。ちなみに去年の一回目はまったく樟脳が回収できなかった。あの時の悪夢を思い出し、緊張しながら蓋を開けると、そこには一面の銀世界に出会ったようなたくさんの樟脳が結晶化した姿があった。鳥取から参加しに来ている今年小学校二年生になる葉ちゃん(ようちゃん)が「いい匂い〜!」と喜んでいる。あたりは樟脳の香りに包まれている。爽やかな春を想わせる季節の香りだ。ひとまずホッと胸をなでおろした。

 

さて話は本日4月4日の六時半。朝のくすかき。大人13人、子供7人の参加。天候にも恵まれ、やっとくすかきができたね!といった朝。今年は寒さのせいか、落葉はまだ少ないが、松葉ほうきを握った時のひんやりとした竹の感触、松葉ほうきで葉が境内を転がる「ざざぁー」という波のような音、凛とした朝の太宰府天満宮に流れる聖域の空気、山のむこうから昇った朝日が描き出す樟の葉の木漏れ日、、、。くすかきの時間が動きはじめた。

 

「なんかまだ体がしっくりこんな(笑)去年のイメージにまだ体がなっとらんからやね。徐々に馴染んでいくんやろね」一年ぶりのくすかきは、まだ体が馴染んでいない違和感を皆感じているようだった。

 

参加者の中に見慣れない顔が四人。親子二人で初参加が二組あった。一組は地元太宰府のお父さんと小学生の息子。友人の紹介での参加。もう一組は、春休みで帰省してしていた名古屋在住のお母さんと春から新中学生の娘。天満宮境内や参道、九州国立博物館などに貼られた くすかきかわら版を見て、こんなのやっているんだ!いいな!と思って来てくれたそうだ。

 

くすかき期間中は学校は春休みだから、こうして子供と帰省した人の参加もある。去年はイギリスから帰省した親子参加者もいたよね。あの人また来るかな?なんてみんなの話題にもあがった。

 

くすかきは「あいだの季節」に行われる。子供に何年生?と聞くと「この春から2年生」とか「4月から中学生です」といった答えが帰ってくる。大人は年度末の忙しさのピークを乗り越え新年度に向かう時期。異動や卒業や入学や入社など、人の出入りも増える時期。何かと何かのあいだの季節。古い葉が若葉に押され、樟の葉が入れかわるこの季節は、不思議なことに人もまた入れかわる「あいだの季節」なのである。

 

「あいだの季節」は、これまでとこれからを感じることができる。

 

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樟脳の結晶。

 

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ドラム缶(冷却装置)の内壁に結晶化している。

 

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樟脳回収。

 

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南極の流氷によく似ている。

 

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一回のくすのこうたき(水蒸気蒸留)でこれくらい収穫です。

 

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まだ掻き山は小さい。

 

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芳樟袋制作のため、樟の葉を持ち帰ります。

 

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山かげ亭(滞在先レジデンス)の桜は、4月3日でまだこれくらいの咲き具合。去年は今頃満開でした。

 

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芳樟袋に適したサイズの落ち葉を選びます。

 

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芳樟袋はくすかき奉加帳(一口2000円の寄付制度)のお礼としてお送りしたり、天満宮案内所や宝物殿で販売されています。集まったお金は運営資金に充てさせていただき、プロジェクトが千年続くための自立した予算運営を目指しています。振込も可能なのでご興味のある方はくすかきホームページの「くすかき奉加帳」をご覧ください(http://igayasu.com/kusukaki/houga/)

 

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4月4日の朝六時半。

 

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落葉はまだ少ない。

 

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樟の葉と枝や小石を分別しています。

 

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日中は山かげ亭で芳樟袋の制作を行っています。絶賛お手伝い募集中です!

 

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最高の葉っぱをチョイスできた!と光を透かして楽しんでいるのは、春から中学生になる八海くん。1年ぶりの再会は、鼻の下にうっすらとヒゲが生え、青年への変化の兆しを感じさせてくれた。もちろん中身も成長してます(笑)

 


くすかき二日目。あられ、雷、曇り、雨、晴れ。

くすかき二日目。昨日は成功祈願祭と松葉ほうきづくりだったので、実際には樟の葉を掻いていない。日々のくすかきという意味では今朝が初日となる。今日は一日、あられ、雷、曇り、雨、晴れといった変化を繰り返すような不安定な天気に翻弄された。長い目で見ると初日にあられが降った年もあったねと振り返る日が来るのだろう。

 

6時前、雨音で目覚める。せっかくの日々のくすかき初日だったのだが、、、。6時すぎには小降りになった。誰かが来ているかもしれない。6時半、天神広場へ到着すると、大人16人、子供8人、合計24人。みんな来ていた!

 

「雨やね」

「どうする?」

「葉っぱが泥だらけになるやろ」

「くすかきしたいけどね」

「葉っぱも落ちとらんしね」

「まぁ、こんなはじまりの年もあるやろ」

 

再び降り始めた生憎の雨で、朝のくすかきは断念。というか落葉も非常に少ない。やはり今年は遅いのだ。せっかく集まったので、五十嵐の解説で境内の樟の木をめぐるショートツアーを急遽開催。お参りもして一旦解散。

 

10時から、鬼すべ堂にて、くすのこうたき(樟の葉を水蒸気蒸留し樟脳を抽出する)を行った。薪割りをして焚き火をし、湯を沸かした水蒸気で蒸して、砕いた樟の葉から成分を抽出し、水で冷やして、樟脳を取り出す。あられ、雷、曇り、雨、晴れと、めくるめく変化する天候の中行われた。風と水が冷たい。昨日の日中は比較的あたたかかったが、今年の太宰府は明らかに去年より寒いようだ。朝晩もかなり冷え込んでいる。

 

地元太宰府のみんなが事前準備でつくった窯が良い感じで、さらに外気温の寒さもあり、鬼すべ堂には樟脳の香りが立ちはじめた。どうやらうまく樟脳を抽出できているようである。

 

16時、夕方のくすかき(土日のみ開催)をしに天神広場へ。と思ったら、雷が鳴り、再びあられが降ってきて、次は突然の雨。天神広場で一時待機したが、境内には小さな水の流れができるほど、葉っぱも濡れ、中止と判断。帰ろうとすると、再び太陽の光が射した。天気に翻弄された一日だった。

 

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朝六時半。天神広場。樟の杜の朝、誰かが来るかもしれないと足を運び、会えた時の嬉しさ。約束は心の中にある。メールや携帯では得られない、どこか懐かしい感動がある。

 

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くすかき参加カードは春から中学生になる米湊咲希ちゃんのデザイン。今年は松葉ほうきのカードに葉っぱの判子が増えていくもの。首にかけたくなる素晴らしいデザインです。

 

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窯の強度を増すための粘土を練る。大人の粘土練りの姿、ステキです。

 

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くすかき初年度に生まれた江藤草次くん。春から2年生になります。

 

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水蒸気蒸留のために樟の葉を分別。

 

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水滴の周りに白く見えるのが樟脳です。

 

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夕方、再びの雷、あられ、雨。

 

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最後、再び陽が差しました。今年のくすかきかわら版の題字は、五年生になる納戸真希くん。お正月に行われたくすかき初年度の集い「かき初め」でみんなで書いた中から選ばれました。

 


くすかき初日。南極から太宰府へ。

くすかき初日。昨夜、南極から帰国後、そのまま太宰府入りし、今日が平成二十九年くすかきの初日。事前の準備は地元の方々の力で成された。これも8年目を迎えたくすかきだからこそできることなのだと、頼もしい太宰府の仲間を誇りに思う。

 

朝10時、約束の地、天神広場へ。太宰府天満宮の樟の杜で1年ぶりにみんなと再会。柵の設置、松葉ほうきづくり会場設営、水蒸気蒸留装置の微調整をすばらしいチームワークで行う。

 

「南極どうやった?寒かったろ?」

「向こうは夏で、−5度から+5度でそこまででもなかったですよ」

「しかし、今年の樟(落葉)は遅いですね」

「桜もまだほとんど咲いとらんもんね。」

「全体的に一、二週間くらい遅い感じやね」

「五十嵐くんを待っとったっちゃないと?(笑)」

「不思議よね。去年は早かったもんね自然は分からんもんね。」

「そのかわりにツバメはもう来とるんよ。ツバメは早い感じやね」

「去年は会期中に熊本地震があったもんね」

「そうよね。あれからもう一年も経つんやね」

 

去年と今年、樟の落葉や桜の開花といった、自然の微妙なタイミングの違いを共有できる豊かさを感じる。太宰府という土地は、自分にとっては「星」である。航海に於いて星は自身の場所を定める目印になる。動かずに輝きを放ち続ける星のような太宰府に、一年に一度こうして帰ってきて、樟とみんなと再会し去年と今年の自分の違いを感じる。今自分がどのあたりを航海しているのかを確認する。くすかきとはこの場に関わるひとり一人にとってそういった場所になっている。

 

13時から御本殿で行われた、くすかき成功祈願祭。宝物殿での松葉ほうきづくり。出来立ての松葉ほうきを持って天神広場でお祓い。くすかき初日には子供10人、大人23人の合計33人が集い、ほとんどの人が参加者ではなく、当事者としてそこにいた。最高の初日となった。

 

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水蒸気蒸留装置の窯を最終調整中。

 

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御本殿にてくすかき成功祈願祭。本年より実施。最終日のくすかき奉告祭と対の関係になります。

 

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永い永い時間感覚の視野で、くすかきを見守り応援してくださっている神職さんです。

 

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今年は今年の松葉ほうきを自分でつくります。

 

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千葉県より、家族で参加。

 

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くすかきには欠かせない道具。松葉ほうき。

 

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職人の原口葵さん。今年も指導に来てくださいました。御歳80歳。72歳の時から毎年一度お会いする今日を楽しみにしています。体の続く限りやります!と言ってくださって嬉しい反面、後継者問題について毎年考えざるをえません。

 

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出来立ての松葉ほうきを持って天神広場にて

 


“Bundling Time” / 時を束ねる

DAY10 AM / Decepcion Islandに上陸。

DAY10 PM / King George Island / Russia Baseに上陸。

 

6:30にDecepcion Island到着の船内放送が入った。うねりに揺られる体を支えながらデッキに上がると、水平線のむこうからあがったばかりの真紅の朝日に目を見張るのと同時に、強い風が体を押した。放送を聞いてデッキに上がってきた仲間が皆口々に「風がきたね」「凧ができるね」と声をかけ肩を叩いてくれる。

 

Decepcion Islandは南極の海に浮かぶ火山の島。火口のクレーターの一部が裂け、そこに海が入り込んでいる。まるで入り口のように裂けた巨大な岩の間を船は入っていった。かつてどこかの国の基地だった施設は廃墟となっており、火山の作り出す赤黒い大地と相まって、この地は“死”を想起させる。

 

浜辺の大きなアザラシたちに襲われないよう適度な距離をとって、凧を準備すると、南極の風をいっぱいに受けて、凧は自らの意思を持つかのように空へとあがっていった。まるで鳥のように上空を舞う凧の姿に海鳥が近づいてきた。

 

空へと引き上げられた組紐の裾は別れ、みんなの手元とつながっていた。航海を通じて、世界中から集ったみんなの手で作られた組紐は、このAntarctic Biennaleの航海で築いた人と人、人と自然との関係性であり、過ごした時間そのものである。Decepcion Islandの大空に組紐が昇る姿はまさに、死の世界に浮き上がった未来への希望の時間を意味していた。

 

航海のあいだずっと“時間”について考えていた。

 

今回の作品「“Bundling Time” / 時を束ねる」のコンセプトは、南極ビエンナーレの航海に同行する世界中から集った人々と協働し、航海中に船内や南極大陸でともに組紐を組み、その紐を使って南極大陸で全員で凧揚げをするというもの。

 

地球の南極点と北極点を結ぶ子午線は、世界各地の時間を定めている。南極大陸は、その子午線が一点に集まるため、世界の時間が集う場所であり、逆に時間のない場所とも言える。一本一本の糸をそれぞれの子午線に見立てて空に向かって組み上げることで、どこの国でもない南極の大地で、だれのものでもない時を束ねる試みである。そして、国境や子午線といった人類がこれまでこの地球にたくさんの線を引いてきが、この星にとってのこれからの線のあり方についてあらためて問い直す機会とした。

 

実際に、南極ビエンナーレの航海には世界中の人が集った。話すのが早い人、遅い人、黙っている人。ゆっくりな人、てきぱきしている人、動かない人。言葉も文化もみんな違う。彼らは自分の中にそれぞれの国や地域の時間であり、自分自身の命が刻む自分だけの時間を持っていた。航海で暮らしを共にし、互いを知り、また、組紐づくりを通して、言語を超え、まるでダンスやチェスをするように相手の呼吸を感じていた。彼らの手に握られた糸は命が刻む鼓動を拾った。

 

そして、この航海に於いて、我々は海のうねりに合わせるように体をつくり変え、風を待った。航海のはじめは陸から離れ外洋に出ると、みんな船酔いに苦しめられた。眠ることで体に波のリズムを馴染ませていくしか方法はなかった。また、凧をあげるための風は人間の都合で吹くことはなかった。人の住まない南極の純粋な自然は、時に我々を受け入れ、時に拒んだ。波や風や氷や石といったものの中にも、それぞれの時間が存在していた。組み上げられた組紐と凧は、自然が刻む息吹を拾った。
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時間とは、誰かが定めた約束事ではない。

時間とは、自分の中に存在する。

誰かの中に存在する時間と出会い、受け入れ、重ねることで、自分の中に流れる時間を感じることができる。

自然の中に存在する時間と出会い、受け入れ、重ねることで、自分の中に流れる時間を感じることができる。

それは、世界で唯一の自分の心の鼓動を、命を感じることである。

時間とは、自分の中に存在する。

時間とは、感じるものである。

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“Bundling Time”  南極ビエンナーレ航海を通じて時を束ねる試みは、人や自然の持つ時間と出会い、自らの命のあるべき姿を強く感じる機会となった。

 

船は3/25の今夜外洋へ出て、3/26,27と2日感かけてドレーク海峡を渡って3/28の朝にアルゼンチンのウシュアイアへと帰港する。

 

12日間の航海を通じて自分の中に残ったものは3つ。

 

世界中のアーティスト・科学者・哲学者との友情。

アレクサンドル・ポノマリョフという偉大なアーティストへの憧れ。

そして、南極という時間と空間の境界を超えた、これまでの旅の先へと向かう、アーティストとしてのあらたな眼差し。

 

船の上では、人は平等だった。これは感覚的なものではあるが、明らかに陸の上とは人の見え方が違うのだ。特にみんなで並んでの食事の時にその差を強く感じた。陸の上では人の役割や地位や存在がくっきりと際立って見えるのに対して、海(船)の上では、それらがもっと曖昧で、お互いの存在が混ざり合っていたのだ。波の力がそうさせるのか、南極という場の力がそうさせるのか、そこには神秘的な調和を感じた。

 

アレクサンドル・ポノマリョフは一緒にお酒を飲んでいると、歌を歌う。そして「日本のサムライも何か歌え」といった感じで、みんなに歌を歌わせる。気がつくと世界中の言葉の歌を皆で鼻歌のように歌って合唱しているのだ。まるで、南極で毎日出会ったクジラたちが交わす鳴き声のように……。

 

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DAY10 AM / Decepcion Islandに上陸。

 

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海に浮かんだ火山の島。

 

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廃墟と化した建物と火山の織りなす風景は死を想起させる。

 

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凧に設置するGoProカメラの角度を調整。

 

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凧が自分の意思を持つかのように大空へ上がろうとしている。

 

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海鳥が近づいてきた。

 

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アレクサンドル・ポノマリョフとともに

 

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世界中の人、みんなで凧揚げ。

 

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それぞれの時間を糸に重ね、そしてひとつになる。

 

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最初で最期チャンスは一度だけ。

 

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時を束ね、コントロールする。

 

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風が安定し、みんなで風を感じ時をコントロール。

 

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“Bundling Time” / 時を束ねる

 

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“Bundling Time” / 時を束ねる

 

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“Bundling Time” / 時を束ねる

 

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最期にみんなで見た夕日。

 

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この世界を未来につないでいく

 

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世界の広さを、人間の大きさを一人の男から学んだ。


風を待つ

DAY9 AM / Brown Base(ARG)に上陸。

DAY9 PM / Leith Coveに上陸。

航海中に、船と南極で組んだ組紐を使って凧揚げをするため、風を待つが、ほぼ無風のため諦める。

 

今日は一日、PARADISE BAYと呼ばれる海にいた。なぜパラダイスかというと、周りを島や山に囲まれて、ほぼ波がなく、水鏡のように南極の風景が見えるからである。当然、風もない。まるで世界の時間が止まっているかのような光景が広がっていた。

 

自分のプロジェクトを成立させるには厳しい条件だが、晴れて風がなく美しい氷の世界が広がる今日のような日は、他のアーティストにとっては待ちに待った自然条件でもあった。誰かのプロジェクトが成立する自然条件なら誰かのプロジェクトは成立しない。南極ビエンナーレは船で動きながら、自然条件に対応しながら、トライを繰り返し、ひとつずつ作品を成立させていく。

 

ポイントを変えて1日に2回、約2時間半の上陸のチャンスがある。自然環境はみるみるうちに変化していく。ロケーションは上陸してみないと分からない。一人のアーティストがトライするチャンスは、作品内容にもよるが、基本は1〜2回。全員が自分にとっての最高の瞬間を狙っている。インスタレーションが終わるとすぐに、世界中の新聞や美術のライター、哲学者、科学者たちが上陸して鑑賞する。

 

ゾディアックというゴムボートに乗る優先順位は、まずはその時にトライするアーティストとサポートチーク。次にドキュメントチーム。その後に記者やライターたちといった順番で上陸するのだが、細かい部分は早い者勝ちなので、皆できるだけ早く上陸したいというのもあって、乗船通路はいつも直前に混雑する。

 

我々アーティストは、朝食や昼食の際に発表されるのを待って、すぐにゾディアックに乗り込んでインスタレーションやパフォーマンスができるよう、常に万全の状態で用意をしておく。

 

また、自分のイメージや条件といった要求をオーガナイズチームに伝えイメージ共有をしておくのも重要なのだが、特に事前のミーティングが用意してあるわけではなく、自分で伝えにいく必要がある。その時に重要なのが、食事の時間であることに途中で気がついた。席は特に決まっていないのだが、食事の時間は関係性を築く時間でもある。ただ楽しく食べていても何の問題もないのだが、誰の横に座って話をするか、伝えたい相手や内容がある時は、その人の横や正面の席を狙って座るようにする。するとその場はミーティングとなる。

 

食事での交渉を重ね、昨日、今日と合わせて3回連続で一番のゾディアックに乗り、凧揚げにトライしてきたが、まさかの南極での無風状態が続いていた。ここ数日、胃が痛い。自然条件なので、どうしようもないのだが、毎回サポートチームが編成され、気合を入れて上陸し、何もできないと、徐々に精神的には追い込まれていく。

 

いつしか、みんなが「カイトは上がったか?」「風は吹いたか?」「次のロケーションはきっと風が吹く」「次はお前の番だ」と、声をかけてくれるようになっていた。

 

また、南極ビエンナーレチーム以外にも、ゾディアックを動かしたりするカナダの会社ONEOCEANのクルーたちも、それぞれの持つ時間を一本の糸の子午線に見立てて、皆で組んだ組紐を使って凧揚げし、時間を束ねるというコンセプトである自分のプランを、いつも世界中の人が南極に集まってくるこの船の航海にとても合っていると気に入ってくれており、いつしか自分のプロジェクトは、この船に乗るみんなが成立させたいものに成長していると感じるようになってきた。

 

朝食の際、マイクを借りて、「いい風が吹いたら、みんなで糸を持って凧揚げをしよう」とつたない英語で伝えたら、皆真剣に聞いてくれ、あたたかくまた力強い拍手に包まれ、まるで船のみんなが一体となっているような、感動する瞬間だった。

 

明日は3/25、明後日3/26からはまた外洋に出て、アルゼンチンのウシュアイアへ向かう航路につく。いよいよ明日がラストチャンス。成立していないプロジェクトはいよいよ自分の凧だけになってしまった。

 

明日、風が吹くことを祈る。PARADISE BAYを離れ、外洋が近づき船は再び大きく揺れはじめた。

 

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アルゼンチン南極基地

 

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だいぶゾディアックの乗り降りにもみんな慣れてきた。

 

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モロッコ出身ニューヨーク在住のアーティストのイト・バラッダ。

 

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船で出た食材から色を抽出し染色。

 

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イトとはどこか気が合う。設置のサポートを頼まれた一緒に布を配置した。

 

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ドイツ人アーティストのトーマス・サラセーノの作品。太陽光でバルーン内が温まり上昇する。

 

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エクアドル人アーティストのポールの作品。カカオの木を南極に持っていくプロジェクト。

 

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トーマス・サラセーノのバルーンは高く上がった。

 

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氷の青が美しい。

 

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調和を感じる神秘的な場所。しばし氷の音を聞く。

 

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PARADISE BAYのAkademik Sergey Vavilov号

 

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時間が止まっているようだった。

 

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ドイツ在住日本人アーティストの長谷川翔くん。スケート&光のドローイングへの挑戦を繰り返す。

 

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長谷川翔くんとポールでスケート。

 

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アレクサンドル・ポノマリョフと特別な場所にて