「そらあみ-氷見-」今年も編みます!

魚々座(ととざ)1日目。外は雪がぱらついている。しかし去年の2月に比べたら、今年の氷見はそれほど寒くないようだ。今からちょうど1年ほど前、オープンする「ひみ漁業交流館“魚々座”」に設置するための〈そらあみ〉を編みに氷見へ来ていた。

 

無事に完成した〈そらあみ〉は定置網をモチーフとした会場空間となる魚々座の入口に、垣網部分(魚の誘導網)として設置された。

 

あれからほぼ1年間、ここ氷見の魚々座では、なんと、ずっと継続的に、地元の方々がボランティアスタッフとなり〈そらあみ〉が編み続けられてきた。そう、世界で唯一、〈そらあみ〉が常設され、且つ、現在進行形で編み続けられているという、特別な場所なのだ。

 

魚々座入り口の垣網として屋外に常設されている〈そらあみ〉は、紫外線などの影響で色が抜けるため、4ヶ月に一度(1年に3回)新調される。作業イメージでいうと、4ヶ月に1枚のペースで高さ3m×幅13mの垣網を編んで差し替える。

 

「ひみ漁業交流館“魚々座”」は、単なる観光施設ではなく、氷見人とそこに訪れた人が氷見の漁業文化を体験しつつ交流する場作りを目指している。氷見には定置網漁発祥の地として、400年の歴史があり、網と共に暮らし、編みながら命をつないできたと言っても過言ではない。また、網を編む行為は人を寄せ、コミュニケーションを誘発する。こういった文化的背景と場作りとしての効果を狙って〈そらあみ〉は常設されたのだ。

 

今回の滞在制作では、これまで氷見で編まれてきた〈そらあみ〉を全てつないで一枚の大きな〈そらあみ〉にして空にかかげ、魚々座がオープンしてから、これまでの1年の成果を振り返ろうというものである。

 

どんな1年だったのだろう?もちろん本当にいろんな人が編んだことは明確である。ボランティアスタッフの中心である荒川さんと新年の挨拶を交わすと共に再会を喜びつつ話を聞いた。

 

五十嵐「今年もよろしくお願いします。ところで、魚々座での1年、どんな1年でした?」

荒川さん「いやぁ。それがつい先日、面白いことがあってね。氷見出身で今は東京に住んでいるオバちゃんが、テレビを見て編みに来ましたって、わざわざ東京から氷見の魚々座へ来たわけ」

五十嵐「え?!東京でテレビ放送されたんですか?魚々座が?そらあみが?」

荒川さん「そう思うでしょ。それが違くて、年末のニュースかなんかの情報番組で、街頭インタビューで、この1年で一番印象に残ったことは何でしたか?といった内容のコーナーがあって、そこで、たまたまインタビューを受けた、JICAの関係で漁業を勉強に来ていたインドネシアの人が、氷見の魚々座で網を編んだのが今年で一番印象に残ったことでした!って話をしたみたいでね。それを見た氷見出身のオバちゃんが出身地だし、いてもたってもいられなくって編みに来たってことだったんだよね。おもしろい話でしょ?!」

五十嵐「へぇ〜、それはおもしろいですね。しかも、広がり方が〈そらあみ〉っぽいというか、、、。こう、体験した人が、その人の感覚で誰かに伝えて、一人連れてくる、あの、去年のアートセンターヒミングでやってた〈そらあみ〉の広がりかたと一緒ですね(笑)」

荒川さん「でしょ!(笑)」「あ!そろそろ12時だから、あのオジちゃんたち編みに来るよ」

五十嵐「あ!地家さん!中田さん!ご無沙汰してます。あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」

中田さん「はい。おめでとさん。」

地家さん「おめでとさん。今日はどっから来た?」

五十嵐「太宰府からです」

地家さん「んなこた」

 

こうして、「そらあみ-氷見-」今年もスタートしました!

 

1月23日(土)に、全ての網をつないで約50mの〈そらあみ〉を、魚々座近くに展示予定です。

 

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ひみ漁業交流館 魚々座入り口に常設されている〈そらあみ〉。年末の12月26日に新調しました。

 

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いい意味で何の違和感もなく、ごく自然にはじまりました。

 

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和船の近くで編んでいます。和船と網。相性は抜群です。