内なる海をさがして

明日から3日間、東京都町田市にある「クラフト工房 La Mano(ラマノ)」に行くことになった。クラフト工房 La Manoは、一般就労が困難な人たちが、生き生きと働ける場として1992年に設立された染・織・刺繍・アートなどのクラフト工房。天然素材を使った織り物などを販売する展示には、遠方から足を運ぶファンも多数。ちなみにLa Manoとは、スペイン語で「手」を意味する。http://www.la-mano.jp

 

話のはじまりは、アーツカウンシル東京からお声がけいただき、「TURN(ターン)」に関わってみないか?というものであった。

 

「TURN」とはなにか?以下、アーツカウンシル東京のTURNフェス開催概要より抜粋。

 

《アーツカウンシル東京では、世界的な芸術文化都市東京として、芸術文化の創造・発信を推進し、東京の魅力を高める多様な事業を展開しています。その中核事業の一つとして、2015年度より、2020年東京オリンピック・パラリンピックの文化プログラムの先導的役割を果たす、リーディング・プロジェクトを東京都とともに実施します。

リーディング・プロジェクトのひとつである「TURN(ターン)」は、異なる背景を持った人々が関わり合い、様々な「個」の出会いと表現を生み出すアートプログラム。初年度となる2015年度は、造形及び身体表現、多様性に関する対話を含めた複合的な内容を盛り込み、福祉的な支援を必要とする人たちを含む一般市民が参加できるプログラムを目指します。具体的には、アーティストと福祉施設・コミュニティとの交流企画を基軸に据えた「TURNフェス」を実施。また、2年目(2016年度)には、多様な人々がアートを通じて交流する通年の活動の場「TURNセンター」のモデル事業を開始します。さらに、活動成果を紹介する第2回目のTURNフェスも実施予定です。》

 

というもの。

 

近頃、各地での活動を通して、我々の身体の中に眠る「海のDNAの記憶」といったことに関心があった。我々人類を含む生物の進化の過程をさかのぼると、生命のはじまりは海にあるという。陸に上がりいつしか忘れてしまった海のDNAの記憶といった部分を揺さぶり、もしくはスイッチを入れることで、閉塞感たっぷりの現代社会に対して、経済第一優先としたハイパー消費社会的な豊かさではなく、生まれてから死ぬまでの限られた時間の中で、心身ともに幸せにこの星で生きる方法を見出すことはできないだろうか?生きることに対する新たな価値観や視点を持つことはできないだろうか?と考えていた。

 

TURNの話を聞いているうちに、福祉的な支援を必要とする人たちは、そうでない人たちに比べて、より素直というか、本能的な感性があるように思え、「海のDNAの記憶」に近い存在なのではないか、何かヒントがあるのではないかと考えた。

 

そんなことを考えていたら「内なる海をさがして」という言葉が浮かび、自分なりの今回の仕事のテーマに据えてみることにした。

 

こうして、自分は参加アーティストの1人としてTURNフェスに関わることを決めた。

 

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様々な天然染料。

 

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「すくも」という染料。藍の葉を乾燥させたもの。

 

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藍染めのグラデーション。

 

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「昆虫ダンス」という作品シリーズ。La Manoには、染め・織り・絞り・アトリエというセクションがある。

 

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他のメンバーの方の作品。整理され保管されている。

 

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染色工程途中で水洗いされている鯉のぼり。

 

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藍甕で染色中。

 

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藍甕の表面。美しい。まるで宇宙を覗いているようだ。

 

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天然染料で染められた糸。

 

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綿花を育てている。紡いで糸にする。

 

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蓼藍(たであい)を育てている。藍染めの染料になる。奥のピンクの花は蓼藍の花。

 

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野菜も育てている畑。地元ボランティアの方々が、自由に手入れをしている。

 

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鯉のぼりを茜で染めている。

 

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La Manoの玄関。藍染めでつくられた暖簾(のれん)が良い雰囲気。

 

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鯉のぼりが玄関に掲げてある。これもLa Manoの商品。

 

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染色された鯉のぼりの開きがたくさん干されていた。


くすのかきあげ

太宰府30日目。くすかき22日目。くすかき最終日。早朝6時半の境内に40名もの掻き手が集い、朝の美しい光と荘厳な空気の中、今年も無事に「くすのかきあげ」を奉納することができました。

 

早朝4時起床。顔を洗い、身支度を整え5時に天神広場へ。まだ暗い中集った仲間で落葉を移動し、千年樟の落葉風景をつくる。6時半に掻き手が集合し、各当番長発表と《くすのかきあげ》の流れを伝え、組み分け。7時から《くすのかきあげ》開始。8時半に朝拝に全員で出席。9時から御本殿で《くすかき奉告祭》を行い。天神広場で記念撮影をして、女性陣は山かげ亭で直会の準備、男性陣は落葉と柵の片付け。12時半から山かげ亭で直会開始。3時から各賞の発表を行い。4時から今年のくすかきのドキュメント映像の鑑賞会をして、直会(一次会)解散。その後、残った人で深夜まで直会(二次会)は盛り上がった。

 

今年の《くすかき》は、《日々のくすかき》も《くすのかきあげ》も早朝6時半から開始することで、「朝の時間」を手に入れた象徴的な年となった。“朝とくすかき”は非常に相性が良い。

 

《くすのかきあげ》も6時半開始にしたことにより、早朝の暗い中で落葉を移動し、朝陽が差すと同時に千年樟の存在が浮かび上がるようなイメージを持つことができた。

 

こうして全体が6時間早くなったことで直会も12時半とお昼の時間からはじまり、今朝早起きだったので眠る子どもや大人がいたり、コマを回して遊んでいたり、お酒を飲んでいたり、まるで休みの日に親戚が集まったような、ゆったりとした時間が流れ、ただの飲み会ではない非常に温かな空間となった。また子どもたちからも、「くすかきの人達と会えるのはくすかきしてる時だけ、こういう普通にみんなで過ごす時間がずっとほしかったから嬉しい」という声もあった。

 

そして、くすかきの何が面白いのかという質問に「くすかきしてると友だちができるから」という答えが、去年も今年も多くあった。これもまた本当にその通りで、子どもたちに限らず、自分を含めた大人同士もまた、くすかきをすることで友だちをつくっているのだと再確認した。くすかきへの入口は“松葉ほうきで落葉を掻く”という大人も子どもも関係なく同じ関わり方をする。そこには社会的立場も会社や学校でのあり方も関係ない。“自分らしくいられる”場所なのである。くすかきの中で勇気を出して、自分らしく、自分の意志で、自分の居場所を見いだすことで、それまでの自分から自由になり、その結果、人としての成長がある。これもまた大人も子どもも関係なく、くすかきに関わる全ての人に起こりうることなのである。

 

直会で、あるお母さんからこんな話を聞いた。「うちの子、学校ではどちらかというと静かで下を向いているような目立たない方の子なんだけど、くすかきに関わることで、ずいぶん変わったの。そのことに一番驚いてる。自分の意志で、くすかきのお手伝いに行ったり、学校にくすかきチラシを掲示してもらえるように校長先生に話しに行ったり、そんな意志をはっきり持って動くタイプではなかったから、ほんとうにどうしたのかなって思って、、、。でも嬉しかった。あの子のそういう姿が見れて。成長したな〜って。一年間、くすかきのこと本当に楽しみにしてたから、、、。来年、大丈夫かしら(笑)」

 

この話は、正直以外だった。なぜなら自分は、その人のくすかきでの姿しか知らなかったからだ。とてもしっかりしているし、くすかきしている時も全体がよく見えている。頼もしい掻き手である。そして何より強い意志を感じる人だったからだ。

 

くすかきをしていると、毎年、急成長を遂げる人と出会う。そして掻き手の皆でこんな話しになる「今年は◯◯の年やったね〜」。○○はもちろん人の名前だ。皆、毎日共に掻いているから分かるのである。《くすのかきあげ》はその人の晴れ舞台でもある。そしてまた他の人を思い起こし「あいつはまだまだやった」とか、「あいつもあと2、3年の間にくるやろ?」といった会話にもなったりする。人の成長に立ち会うことほど豊かで感動的なことはない。くすかきは6年目にして、関わる人が“自分らしく成長を遂げる場所”に確実になってきている。

 

くすかきは、毎年、どんな《くすかき》になるのか、はじまるまで分からない。どんな人が集まるのか、どんな落葉になるのか。その年に集った人と樟、それ次第なのである。

 

平成二十七年、今年も見事な千年樟が描き出されました。今年も良い、くすかきでした!また来年、樟の葉が落ちる頃に、太宰府天満宮の樟の杜で会いましょう!お疲れ様でした!!!

 

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第六回 五十嵐靖晃「くすかき-太宰府天満宮-」

[会期]平成二十七年 四月四日[土]〜二十五日[土]

[会場]太宰府天満宮 境内

[行事]松葉ほうきつくり:会期初日 四月四日 開催

日々のくすかき:期間中 早朝六時半より 夕方十六時より 開催

くすのこうたき:期間中 毎週土日 開催

くすのかきあげ:会期最終日 四月二十五日 開催

[参加人数]六百五十一 名

[奉加帳賛同者]百三十五 名

 

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くすのかきあげ各当番長

[水当番]江藤応樹 井原功介 佐藤信二

[新芽当番]松大路信昌

[根っこ当番]飯高左智江 米湊五郎 大里武史 天賀友加利 陽山英樹

[幹当番]根っこ当番と同じ

[目立て当番]飯高左智江 米湊五郎 大里武史

[舟当番]掻き山:米湊咲希 奉告祭:天賀來星

[ほうき当番]井原功介 宮本市郎

[太鼓当番]五十嵐靖晃

 

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[特別協力]太宰府天満宮

[協力]中川政七商店/福田屋染物店/株式会社ムーンスター

[Project Staff]飯高左智江

[Photograph]前田景

[Film]仲信達也

[Design]河村美季

[SpecialThanks]太宰府のみなさん/油機エンジニアリング株式会社/ありがとう農園/太宰府CAT/百花堂/猪股春香/米津いつか/

[松葉ほうきつくり]原口葵

 

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最後に、静岡からの参加してくれた大学生からメールが届きました。メールでのやりとりを一部紹介します。くすかきのみんなとの別れ際、スーツケースを引きながら涙を溜めていたのが印象的でした。おそらく帰りの新幹線で号泣したことでしょう(笑)

 

こんにちは。◯◯です。先日は「くすかき」に参加させていただいたこと、山かげ亭に滞在させていただいたこと、本当にありがとうございました。「くすかき」は本当に参加できてよかったなと感じています。太宰府に行ったこと・くすかきに参加したことにより、いろいろな面で成長できましたし、成長とは違う、何か「いいもの」がわたしの中にたくさん積もったような気がします。4日間という長いような短いような時間を太宰府ですごすことができて本当によかったです。また来年も、ぜひ参加させてください。

 

メールありがとう。五十嵐です。今、あなたの中にくすかきのみんながいるように、くすかきのみんなの中にもあなたがいます。また来年、樟の葉が落ちる頃に、太宰府天満宮の樟の杜で会いましょう。

 

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早朝5時。天神広場集合。落葉の移動。顔が見えないけど、声で誰か分かる(笑)。

 

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実は掻き山に飛び込んだりしていいのは、一年に一回、この時間のみ!みんなダイブしてました(笑)

 

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早朝5時半。空が明るくなってきました。境内に朝日が差すと同時に、かつて存在した千年樟が落葉したであろう風景が現れる。

 

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太宰府天満宮の開門の瞬間。初めて見ました!!!皆、手を止め、しばし眺める。

 

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平成二十七年度「くすのかきあげ」開始。第一幕「葉っぱを落とす」。平成二十七年四月二十五日の朝の落葉風景をつくります。子どもたちは新芽当番。新芽が古葉を押し出します。

 

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第二幕「根っこをつくる」。掻き手全員参加。5つの組みに分かれ、松葉ほうきを使って千年樟の根っこを描き出します。

 

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今年の根張りは去年に比べて、細長く複雑に広がっており、繊細な仕上がり。不思議なもので、これも毎年形が違って、見える印象が変わるのです。

 

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第三幕「幹をつくる」。今年の掻き手の顔だった当番長五名のみで、根から幹へと全ての落葉を掻きます。当然くすかきの心技体が揃っている五名はみんなの憧れです。柵の外から、いずれあの役割を担うべく虎視眈々と若手が見つめています。

 

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第五幕「落葉の落ちてくる場所をつくる」。今年から登場した特大松葉ほうきを使って、目立て当番三名が縞模様を描き出します。また来年、千年樟の落葉が落ちてくる場所を整えます。

 

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第六幕「香りを届ける」。一幕は子どもたち。二幕は全員参加。三幕は五名。四幕は三名と徐々に柵の中に入れる人は減っていき、一番最後に唯一入れるのは、大樟香舟を掻き山の上に乗せる舟当番の一名のみ。一年間の記憶を結晶化した香りとみんなの想いを大樟香舟に乗せて、高くなった掻き山の頂点へと、その先の天(そら)へと届けます。その大役は今年一番成長した人が担います。今年の舟当番は文句無しで米湊咲希(小学5年生)。一年間この瞬間を目指して彼女はくすかきに関わってきました。そして見事にその大役をやりとげました。驚いたのは、緊張してるかな〜?と、直前に話しかけると、掻き山に乗せる大樟香舟の向きを天神様(御本殿)の方に向けていいでしょうか?という相談が!!!もちろんそうしてくださいと答えました。鳥肌が立ちました。ちゃんと「見えないけれど大切なものを想う心」が伝わっているんだと思えた瞬間でした。来年以降、この風習は恒例となるでしょう。彼女が、くすかきに新たな歴史をつくった瞬間でした。

 

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第六幕「くすかき奉告祭」。大樟香舟を御本殿に運び、天神様に奉納します。この役は天賀來星(小学五年生)が勤めました。彼もまた、今年のくすかきの顔の1人。来年の更なる成長を期待する声も多い。

 

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くすかき奉告祭で御本殿に上がるまでの待ち時間。緊張した面持ち。でもこの時間が大事。

 

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直会にて、第一回くすかき杯表彰式の様子。くすかきに参加すると押してもらえるスタンプの数上位三名と、朝一番に来た回数が多かった「一番乗り」の称号を称えます。手前から一位:天賀來星(36個)。二位:松大路昌暉(35個)。三位:米湊咲希(34個)。そして「一番乗り」の称号は松大路昌暉。なんと松大路昌暉はダブル受賞でした!!!笑顔すぎてほっぺたが落ちそうに見えました(笑)。

 

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10日は雨でお休みの日。全出席で40回。そのうち36回とはすごすぎる!

 

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それでも、受賞者の中から「くすかきは回数ではなくて、良いくすかきができているかどうかが大事だし、このスタンプはその思い出です」と素晴らしい話しを聞けたので安心しました。

 

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早い時間にくすのかきあげをする効果は直会にも現れる。コマを回す人。酒を呑む人。話す人。寝る人。まるで親戚が集ったお休みの日みたいです。こんなにも豊かな時間が流れるとは。みんなくすかきをきっかけにここにいる。大きな大きな家族です。今年もほんといいくすかきでした。また来年、どんなくすかきになるのか、終わった瞬間から話しが盛り上がりました(笑)。みんなとの再会と、それぞれの成長と、新たな出会いが楽しみです。平成二十七年くすかき無事に奉納できました。応援してくださった皆様ありがとうございました!

一年で一番早起きで健康的な一ヵ月です。くすかき暮らしのおかげで心身ともにすっかり清められ、エネルギーに満ちています。太宰府を離れても、一日でも長く早寝早起きを続けたいのですが、どうなることやら、、、(笑)

 

ではまた来年


くすのかきあげ前夜

太宰府29日目。くすかき21日目。いよいよ明日は、くすかき最終日。「くすのかきあげ」が行われる。

 

早朝くすかきに集ったみんなから静かな気持の盛り上がりと、適度な緊張感が伝わってくる。

 

全ては明日のため。この三週間、朝6時半と夕方4時に樟落葉を掻き、大きな掻き山へと成長させてきた。土日は樟落葉から樟脳を抽出したり、落葉を厳選し袋につめたり香りの結晶をつくってきた。

 

また、《日々のくすかき》を通して身体を《くすのかきあげ》に向けて作り込んできた。そして何より、掻き手同士の関係性を深めてきた。

 

これら三週間の全てのプロセスが明日の《くすのかきあげ》で昇華される。

 

明日、今年の《千年樟》が描き出される一年に一度の瞬間を迎える。

 

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それぞれに落葉を掻き、場を整え、明日のくすのかきあげに向けて、自分の心身の仕上がりを確認。

 

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年齢は関係ない。朝の光の中、落葉と場を見つめ、今年の自分をみつめる。

 

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今年から新たに導入される「特大松葉ほうき」。第四幕「葉っぱが落ちてくる場所をつくる」で、目立て(縞模様を入れる)象徴として登場します。一般的な松葉ほうきと使い勝手が違うので当番長三名で塩梅の確認中。

 

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静かな朝でありながらも、明日にかける意気込みが伝わってくる。

 

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だいぶ枝が多くなりました。枝が落ちると落葉が終わるサインです。

 

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美しい、、、。今年の天神広場との関係も十分に整いました。明日、ちょうどこの場所の中央に千年樟を描き出します。

 

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夕方、かつて千年樟が実在した場所に柵設置完了!現存する樟を根踏みから守るために設置してある柵と同じデザインになっています。

 

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夜の山かげ亭。樟脳をパッケージし、全国のくすかき寄付者にお送りする「樟香舟」の最終作業中。明日の「くすのかきあげ」が早朝6時半からということもあり、前日からの宿泊者が増え、お手伝いのおかげで作業がはかどります。今夜、山かげ亭には、東京から四名。静岡から一名。千葉から一名。少し離れた福岡県内から一名。計七名が宿泊します。

 

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完成した「樟香舟」。これから全国のくすかき寄付者の元へ旅立つと共に、明日の《くすかき奉告祭》では、御本殿にて天神様に奉納されます。


宮司邸

太宰府28日目。くすかき20日目。朝のくすかきをして、朝拝に行き、その後、宮司邸へ。宮司さんと奥様の圭子さんが「くすかき奉加帳」へ参加してくださると連絡をいただき、約束の時間に会いに行った。とっても忙しいお2人がこのために時間をつくってくださったことに、まず感謝である。

 

お2人には、2010年に《くすかき》がはじまる前から、いろいろと相談にのっていただいたり、最初の最初からずっと応援してもらっている。この「くすかき奉加帳」という、1人1人向き合うことを大切にし、署名をしていただき寄付を集める方法も、参加型プロジェクトであるスタイルに合っているのではないかと、宮司さんからアイデアをいただいたものである。

 

現段階でお2人に今年のくすかきの報告を簡単にさせてもらった。宮司さんが特に喜んでくださったのは、子どもたちが楽しそうに、且つ積極的に参加してくれていることだった。

 

宮司さん「くすかき定着してきたね。季節の風物詩になってきたよ」

五十嵐「はい。ありがとうございます。早朝6時半は出勤前の大人や、通学前の子どもたちが毎朝20名前後参加してくれて、朝のラジオ体操のような感じになってきました」

五十嵐「夕方のくすかきの後は、子どもたちが境内でコマまわしや野球なんかして、地元のお宮としての温かい雰囲気が広がっています」

宮司さん「それはお宮としても嬉しいな。以前のように境内に子どもたちの声がもどった。私も小さい頃は《くすかき》の葉っぱの山があるところの石灯籠を背にホームベースにして野球したりして遊んでいたんだよ。今みたいに樟のまわりには柵もなかったしね」

五十嵐「それに、太宰府小学校に通う小学生たちが、自ら《くすかきポスター》を持って行って、校長先生に交渉して、1年生から6年生まで全18クラスに掲示してくれたんです。下駄箱にも貼ったって言ってました(笑)」

宮司さん「それはすごいことだね。これから未来をつくっていく彼らが、そうして積極的に参加してくれるというのは、《くすかき》が本物ってことだよ」

 

とっても良い報告ができた。1110年以上の歴史のあるお宮で、まだたった6年目ではあるが続けてきてよかったと思う。そして子どもたちの成長と共に、このくすかきもまた成長していくのだと、あらためて思った。そして、自分もまたこの地で《くすかき》をきっかけに作家として、1人の人間として成長させてもらっている。《くすかき》に関わる全ての人にとって、そこに関わることで発見や成長ができる存在でありつづけていられることを目指そうと思う。

 

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目立て(縞模様を入れる)をして、場所を整え、次なる葉っぱが落ちてくる場所づくり。

 

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掻き山のむこうにある石灯籠。あれを背に宮司さんも子どもの頃、境内で野球をしていたそうです。

 

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山かげ亭にて、樟脳の昇華を行い、純度100%の結晶にします。上手に結晶化すると、なんと葉っぱの形になるのです!

 

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昇華の様子。固体か気体でしかいられない樟脳の特徴を利用し、下から熱を加え、上で冷やします。下で気化した樟脳は上の皿の底(下側)に付着し結晶化し、下の皿に不純物のみ残るという仕組みです。

 

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昇華を終えた樟脳は、薄い紙に包み、それを和紙でパッケージし「樟香舟」となり、寄付をしてくれた全国の方々の元へと、春の香りを届けに旅立ちます。

 

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地元太宰府の方の声がけで《くす鍋会》開催!明後日に迫った最終日「くすのかきあげ」に関する打合せをしつつ、みんなで当日へ向けて英気を養おうというもの。もつ鍋に水炊き。めちゃくちゃ旨かった!そして、この「くすのかきあげ」2日前の《くす鍋会》を恒例行事にしたい!!!なにより地元の人の声というのが嬉しい!!!くすかき最終日に向けて盛り上がりを感じる良い時間になりました!!!!!


恒例の釜磨き

太宰府27日目。くすかき19日目。今朝はほとんど落葉がなかった。朝夕のくすかきは普段通りに行い。日中は鬼すべ堂で水蒸気蒸留装置の解体と、もはや恒例行事となった釜磨きを行った。

 

釜磨きとは、水蒸気蒸留で使用し煤が付いて真っ黒になった、釜、蒸留装置、ヤカン、タライなどなどをピッカピカの銀色になるまで磨くことである。

 

そして釜磨きといえば大里さんである。去年も大里さんが見事に磨き上げた。お仕事は車のメカニック。職業柄、ピカピカになるまで手を止めることはない。そして今年も当然ピッカピカ。

 

大里さん「『使う前より美しく』やろ」と一言。さすがである。

 

明日と明後日の日々のくすかきをしたら、いよいよ、くすかき最終日の「くすのかきあげ」。

 

くすかきも残す所あと3日。

 

朝5時半くらいになると自然と目が覚める。身体は徐々に「くすのかきあげ」に向けて、仕上がってきている。

 

樟の葉はすっかり若葉に入れ代わった。我々の心身も春の息吹に満ちつつある。

 

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今日の掻き山。

 

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鬼すべ堂も元の姿に戻りました。

 

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藤が咲きました。日差しも変わりました。山の色も黄緑が増えモザイク状に変わりました。

 

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ピッカピカです。新品みたい。


記憶を呼び起こす装置

太宰府26日目。くすかき18日目。夕方のくすかきに全国から参加があった。東京、岩手、福岡市内、そして地元太宰府の方々。会期はじめからの延べ参加人数は500名を超えた。東京や岩手の方は太宰府観光中、掲示してあったくすかきポスターを見て興味を持って参加。福岡市内のお2人は去年から太宰府のサイトを見ていて気になっていて、くすかきをするために今日は太宰府まで足を運んでくれたという。東京の方は「からだに浸み込む素晴らしい体験でした。有難うございました。」と手紙までくださった。4人とも奉加帳の寄付にも参加してくださり、香りが届くのを楽しみにしていますと帰っていった。福岡市内、東京、そして岩手へ、太宰府の春の香りが届くと思うとなんだか、わくわくしてくる。ただ観光地を通りすぎるのではなく、大きな樟の木の下で落葉を地元の方々といっしょに掻き、言葉を交わす。このように、その土地に一歩踏み込む体験は記憶に残るはずである。そして、ゴールデンウィーク明けに届く、「くすかき奉加帳」のお礼の品である「芳樟袋」と「樟香舟」の香りを通して、今日、太宰府天満宮で過ごした瞬間を思い起こすのであろう。香りには記憶を呼び起こす効果がある。

 

樟の葉は1年経つと落ちてくる。その葉は1年の記憶を宿していて、その香りの結晶は1年の記憶の結晶とも言える。

 

樟の葉は毎年変わらず落ちてくる。その香りは変わらない。樟の木も変わらない。樟の葉を掻く行為も変わらない。千年前も千年後もここに樟の木と、くすかきがあり続ければ、遠くから太宰府の記憶を、去年の自分の記憶を、千年前の記憶を、そんないろんな記憶を樟の葉を掻く行為とその香りから、呼び起こす装置になるのかもしれない。

 

 

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今朝は、けっこうたくさん落ちました。

 

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掻き山と樟。この樟は樹齢800年と聞きました。

 

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夕方のくすかきはもう夏のような日差しでした。

 

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青空に燃える樟若葉。もう完全に季節が変わった感じです。

 

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天神広場で、じいちゃんとコマまわし。


葉から場へ

太宰府24日目。くすかき16日目。朝夕の《日々のくすかき》と、今年最後の《くすのこうたき》を行った。

 

樟の落葉枚数はここのところ少なくなってきている。そして小枝が多く混ざるようになった。枝が落ちると、落葉が終盤に向かっているサインである。

 

落葉が少なくなると、「今日は葉っぱないね」という言葉が交わされ、なんとなくみんなテンションが下がる感じになる。しかし、葉っぱがないときこそ、くすかきのコンセプトである「葉っぱが落ちてくるための場所づくり」ができる。具体的には、松葉ほうきを使って目立てをし、縞模様を描き出す。

 

ふと、「樟は、よくできてるなぁ」と感じた。その理由は、くすかき会期はじめはたくさんの落葉があり、1年ぶりの落葉掻きというのもあって、感覚を取り戻しながら、目一杯掻き、皆の足並みは揃わず、少し気持が空回りしているところからスタートし、日々感覚を取り戻しながら、チームワークが育ち、徐々に落葉の量が減っていくことで、最終的に「落葉掻き」から「場づくり」へと、ステップアップする。「葉」から「場」へ意識が変化していくのだ。そして、今年の掻き手の顔がだいぶはっきりと見えてきて、最終日の「くすのかきあげ」を迎え、目には見えないけれど大切なもの、葉っぱでも場でもなく、その先にあるイメージの象徴である、かつて存在した千年樟を描き出すといった三週間の流れがある。このプロセスが非常に重要である。樟と同じようにくすかきの掻き手もチームワークも意識も日々変化し成長していくのだ。

 

それがちょうど《くすかき》の会期であり、落葉のタイミングでありといったものと、うまくいくようにできている。それで「樟は、よくできてるなぁ」と思ったのだが、まぁ、樟の落葉に合わせて《くすかき》をはじめて、毎年改良を加えてきたから、当然そのようにしかならないといえば、確かにそうなのだが(笑)

 

樟は、くすかきをしていようが、していまいが、毎年、新芽を出し落葉する。人はそこに感動し、多くを学ぶ。樟はそこに、ただただありつづける。重要なのは、人がそこからどのように美しさや豊かさを見いだすかどうかである。要は、平たく言うと、ものの見方でしかない。豊かで美しいものの見方ができれば人生は豊かで美しいものになるということだ。全ての答えは自分の中にある。

 

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今朝の落葉風景。

 

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掻き山のまわりも目立てしました。

 

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チームワークばっちり。

 

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目立てして緊張感のある空間になりました。落ちてきた枝を縞模様を消さずにピックアップ。

 

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同じ掻き山なのに目立てをして見え方が変わりました。「掻き山の中に何か入ってるみたいに見える」と誰かが言った。

 

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昨日の水蒸気蒸留で採れた樟脳。辺りはさわやかな樟の香りに包まれています。

 

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今年最後の竃の番人達の姿。

 

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葉っぱを細かく砕くマシーン(その名も、葉っぱバラバラ)もきれいにメンテナンス。

 

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次に使うのは1年後。入念に手入れ。

 

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今日は最後のくすのこうたきということもあって、それぞれ焼きたいものを持ってきて楽しい雰囲気。子どもたちには、肉より芋が人気があってびっくり。

 

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冷却装置に水をかけます。おしゃべりも柄杓で水をかける手も止まらない。女性陣、流石です。

 

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バナナもリンゴも芋も鶏肉も焼いてみました。

 

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落葉が落ちてくる場所づくりした上に落葉が落ちてきました。やはり見え方が違います。


一番乗り

太宰府23日目。くすかき15日目。昨夜、富山県の氷見から展示設営を終えて太宰府にもどった。二晩太宰府を離れただけだったのだが、樟の木はすっかり若葉色が目立つようになっていたのが印象的だった。樟は待ってくれない。特にこの時期の樟は、日々その見えが刻々と変化していく。

 

それと同じように、日々刻々と変化していくのが、子どもたちだ。彼らが最近夢中になっていることのはたくさんある。コマまわし、タケノコ掘り、焼き芋、、、(くすかきに参加している子ども達は何故か古き良き日本の子どもといった雰囲気がある)。そんな夢中なことの1つに《くすかき》があり、来た時に押してもらう“くすかきスタンプ”がある。スタンプはくすかきカードに押してもらい、自分が何回くすかきに来たか分かるようになっている。平日は朝と夕方で両方来たら2個ゲット。土日はくすのこうたき参加でも1つ押してもらえる(今年正式発表された。笑)ので最高3個ゲットできる。最終日、だれが一番になるかでしのぎを削っている。中にはスタンプだけでくすかきしないでほぼ遊んでいて冷たい視線を浴びている人も時折いる(笑)。

 

そして、もう1つ。去年から自然発生した「一番乗り」という称号がある。要は、朝誰が一番早く来たのかというものだ。朝6時半からのくすかきを続けていると、身体は朝型になり、自然と早起きになる。そうすると、徐々に集まる時間が早まっていく傾向があり生まれたものだ。

 

去年は一部の大人が独占していたが、今年は小学2年生のマサアキくんが、かなりの回数一番乗り。先日、くすかきに来てくれたお母さんに話を聞くと、目覚まし時計が鳴る前に飛び起きて、くすかきに行くそうだ。そして、天候が怪しい時は、雨が降っているかどうか、お母さんを呼んで一緒に「雨、ふっとらんよね?」と確認してお家を飛び出すそうだ。

 

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2日ぶり。同じ様でやっぱり違う。

 

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できることが増えていく。

 

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くすかき判子。かなりの数になっています。

 

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今日の掻き山。不思議なもので、これ以上はなかなか大きくならない。

 

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先週より上手に割れるようになっている。

 

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タケノコ23本!!!少年達がみつけてきてくれました。焼いて食べました。

 

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2日見てないだけで、樟はすっかり若葉色になった。


魚々座「そらあみ-氷見-」展示設営完了

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魚々座入って右を向くと、そらあみを編めるスペース。左の大漁旗のところが受付。奥は海関係の本を集めた図書スペース。畳の乗ったバンコに座って本を読んだり、ゆっくりできます。

 

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左には、木造和船のテント船。

 

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館内奥に向かってどーんと定置網が広がります。魚の視点で館内を回遊。

 

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氷見は定置網400年の歴史があります。家々から集めた様々な漁具が展示されています。

 

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大量のガラスの浮き玉

 

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氷見の網針は舟形をしています。ほしい!!!

 

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魚々座入口に設置した《そらあみ》。定置網と融合して、浮きが付いています。

 

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実際の垣網は数㎞にもなります。これから、どんどん伸びていくと面白いよね。と氷見の仲間と盛り上がります。

 

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そらあみ初。オンゴーイングで編み続けられるスペースの誕生!!!

 

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是非、氷見に網を編みに来てください。そこで氷見の人と出会い、定置網漁をはじめ、氷見のいろんな話を聞いてみてください。普通の観光では出会えない土地への入口になるはずです。美味しい魚や大漁鍋も待っています。


魚々座(ととざ)展示設営

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氷見のみなさんと約1ヵ月ぶりの再会し、展示設営。4月21日に開館する「ひみ漁業交流館 魚々座」の入口に「そらあみ-氷見-」を設置します。建物の中には定置網が立体展示してあり、その垣網(魚を寄せる誘導網)部分が《そらあみ》になります。人を寄せる垣網になります。

 

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館内では《そらあみ》体験ブースも設置されます。網が編みたい人は氷見の魚々座へ集合!!!

 

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2月11日から3月15日までの「そらあみ-氷見-」のドキュメントも展示。延べ人数331名の参加者や時間の流れが見えてきます。

 

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こんな雰囲気です。電球は集魚灯。館内全体に点在してあります。